肌育コラム

COLUMN
2022.1.07

どう乗り越える?女性ホルモンによる「心と体のゆらぎ」

どう乗り越える?女性ホルモンによる「心と体のゆらぎ」

「イライラして人にあたってしまった」「なんだか落ち込んで悲しくなる・・・」突然訪れる心身の「ゆらぎ」にどうしようもない気持ちになることはありせんか?

女性ホルモンのアンバランスが影響して女性の心や体にさまざまな不調を引き起こす「ゆらぎ期」。これまでは40代以降に見られる女性ホルモンの急激な減少によるものがよく知られていましたが、最近では20代や30代の女性にも心身のゆらぎを感じる方が増えているといわれます。

今回は、女性のカラダに一体どんなことが起きているのかを紐解きながら、上手にゆらぎと向き合い、毎日をご機嫌に過ごすヒントを見つけてみましょう。

心身の変化が現れやすくなる”ゆらぎ期”とは

女性ホルモンが女性の健康にとって大きな役割を果たしていることはすでに多くの方がご存知でしょう。
40代以降に女性ホルモンが急激に減っていくことで訪れる「ゆらぎ期」は、卵巣の働きが衰えるいわゆる「更年期」とよばれる時期に当てはまります。それまで女性ホルモンのお陰でスムーズだった心身の動きが急にコントロールしづらくなり、これまでにない様々な体の変化を感じて戸惑う時期です。

一方、20代・30代で感じる「ゆらぎ」のほとんどは、日々のライフスタイルや人間関係から受けるストレスによって起こるもの。ストレスは女性ホルモンのバランスをいとも簡単に崩して、心も体も不安定な状態にしていきます。

いずれにしてもこの「ゆらぎ」と上手に向き合っていくためにはまず自分自身の体を知ることから!ゆらぎの状態をチェックして、なぜ心身の変化が現れやすくなるのか理解することから始めてみましょう。

ゆらぎ期の症状からセルフチェックをしよう

「今、自分はゆらぎ期なのかな?どうかな?」と漠然とした不安や不調を感じている方に向けてセルフチェックをご用意しました。
まずは、ご自身に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。

【ゆらぎ期セルフチェック】

・目が覚めてもなかなか起き上がれない
・天気がいいのにやる気が起きない
・メイクのノリが悪くなった
・運動をしていないのに動悸が激しい
・ほてり・汗・不安感・イライラ感がある
・以前よりも目が乾きやすくなった
・なかなか眠れず、目が覚めやすくなった
・仕事や家事に時間がかかったり面倒に感じたりする

当てはまるものはいくつありましたか?
これは更年期のゆらぎ期に見られる代表的な症状ですが、20代30代でも似たような不調を感じることも。もし当てはまるものが多いなら心身のゆらぎが起きている可能性がありそうです。それでは、どうしてこのような変化が起きるのか理由をお話していきますね。

ゆらぎ期にはどうして変化が現れるの?

女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類がありますが、中でも心身のゆらぎに大きく影響するのは「エストロゲン」の分泌量の低下と言われています。

特に更年期は、卵巣の働きが衰えることでエストロゲンの分泌量がゆらゆらとゆらぎながら徐々に減少していくため、心身の働きが定まらず大きな不調が起こりやすくなります。また、20代・30代の女性の場合は「無理なダイエット」や「過度なストレス」などから起こる生活習慣の乱れが女性ホルモンのバランスを崩す原因になります。

ゆらぎを最小限に抑え、活力に溢れたカラダへと切り替えていく鍵は、日常に積み重なる小さなストレスをできる限り減らし「女性ホルモンのバランス」をとること。それには、日々感じる小さな不調を見逃さずバロメーターにすることがポイントになります。

こんなにちがう!女性ホルモンと男性ホルモン

女性ホルモンは卵巣から2種類(エストロゲンとプロゲステロン)分泌されています。この2種類は一定の動きではなく、決まった周期・タイミングで変化していきます。それは妊娠・出産にむけて「守る」本能に働くからです。

一方、男性ホルモンは精巣から1種類(テストステロン)が分泌されています。1種類のみで、毎日一定の動きをしています。それは子孫繁栄のため「闘う」本能として働きます。

女性ホルモンの特質

自律神経を安定させる
髪を美しくたもつ
丸みをおびた体のラインにする
記憶力をたもつ
食欲を抑制する
女性の整理や妊娠をコントロールする
骨を丈夫にする など

男性ホルモンの特質

たんぱく質を筋肉や内臓に変えるのを助ける
筋肉質な体のラインにする
体毛の発育をうながす
性欲を高める
皮脂の分泌を促す など

男女ともに両方のホルモンを持っていますが、女性は女性ホルモン、男性は男性ホルモンの量が圧倒的に多いため、身体的・精神的特徴に差異があると言われています。

2種類の女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」は、いずれも卵巣から分泌されています。この2種類にはそれぞれ違った働きがあり、カラダが必要とする時期に応じて絶妙に入れ替わるように分泌のタイミングが訪れますが、そのミッションはただ一つ。妊娠・出産を成就させるために体の「守り」を固めること。

では、その一大ミッション成功に向けて2種類の女性ホルモンにはそれぞれどんな働きがあるか見てみましょう。

エストロゲンとプロゲステロン

エストロゲンの動き

エストロゲンの役割は、ズバリ!女性らしい魅力を際立たせて異性を引き寄せること!より良い条件で子孫を残したい雄(オス)の本能をくすぐるべく、心身を最高潮な状態につくり上げていきます。
月経後から徐々に分泌量を増やし、排卵前に迎えるピーク期には、容姿、振る舞い、声が異性にとってもっとも魅力的になるという研究報告もあるそう。
月経後の開放感とともに、心身にはパワーがあふれ、肌や髪の色艶もよく、優しい母性に満ちた女性の魅力全開になるのはエストロゲンのおかげなのです。

プロゲステロンの動き

プロゲステロンの役割は、妊娠・出産の成功にむけて徹底的に身体の守りを固めること!そのためにたっぷり栄養を溜め込んで、丸みと弾力のあるカラダにつくり上げていきます。
排卵が終わる頃には子宮内膜をふっくら厚くして受精卵を包むふかふかのベッドを準備。妊娠成立なら引き続き栄養を溜め込み、妊娠がない場合はふかふかベッドを解体して子宮内をきれいに大掃除するために月経を起こします。
ほてりを感じたり、むくみや便秘で体が重くなったり、精神的にもうつうつしやすくなったり…と女性特有の様々な不調に見舞われるのはこの溜め込む性質のあるプロゲステロンの影響です。

女性ホルモンの守りが弱くなる月経前

異なる働きによって女性のからだを守ってくれているエストロゲンとプロゲステロン。しかし、月経前はどちらの女性ホルモンも分泌が下がることから、「守り」の体制が一時的に弱くなります。

それに連動するように頭痛や腰痛など体質的にもともと弱いところに症状が現れたり、全身がだるく眠くなる、血行が滞りやすくなる、お肌の調子がデリケートになり免疫も低下する…などいわゆる月経前症候群(PMS)の引き金にもなります。

ただでさえ月経のたびに消耗する女性の体、それ以外の時間はできるだけ穏やかに心身を安定させて過ごしたいもの。毎月のように「ゆらぎ」に悩まされるのはつらいですよね…。

ただ、この女性ホルモンによる「ゆらぎ」は、心身を「守る」ための防御作用という側面もあります。「ゆらぎ」がSOSのサインとなり心身に無理をさせないようブレーキ代わりとなって「体を休ませましょう」と教えてくれているということ。カラダからのサインを受け入れ、大事なときにパワーを発揮できるよう休息することも大切なことです。

女性ホルモンによるゆらぎは、どうしても体調や気持ちを不安定にしがち。
そこで、ゆらぎをできるだけ小さくするための具体的な方法をいくつかご紹介します。できそうなことから少しずつ実践して心身を安定させていきましょう。

女性ホルモンでゆらぎを小さくする方法

セルフケアを取り入れて生活を見直してみる

毎日の生活の中でゆらぎを小さくしていくためには、何と言っても無理をしないこと。「ゆったりと休んでリラックスをする」ことが一番のポイントです。


・自分の好きな香りの精油でアロマを楽しむ
・スマホから遠く離れて、睡眠をしっかりとる
・湯船につかって心地よい水圧を感じる
・やさしい手の圧で包むようにボディマッサージをする
・ハーブティーを飲んでほっと一息つく
・足浴・手浴で末端の血流を良くする


心穏やかにリラックスするにはバスタイムを上手に活用するのが断然おすすめ。 好きな香りを楽しみながら自分のカラダと触れ合う時間は1日のストレスを吹き飛ばしてくれます。

もしも「それすら面倒…」というほど重だるい日なら、ゆっくりハーブティーを飲んだり、足浴や手浴で末端の血流を良くするだけでも充分リフレッシュできます。

体調や気持ちが不安定にゆれるのは「休むといいよ」というカラダからのサイン。頑張っている自分へのご褒美だと思ってゆっくりとカラダを休めてあげましょう。

漢方や食事で女性ホルモンのバランスを整える

セルフケアもできないほどゆらぎがつらい、もっと根本的に改善したい…と言う方は、ホルモンバランスを整えるための漢方や中医学の食事療法を試してみるのはいかがでしょうか?
生理による心身のゆらぎは、中医学では「肝」や「腎」の機能低下、「血」の不足だと考えられています。ゆらぎのタイプにより最適な漢方は変わりますが、肝・腎の機能を高めて血を補うレバー・にんじん・トマト・黒豆・プルーンなどの食品が特におすすめです。

参考文献:『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方 カラダと心をいたわる365のコツ』144-205

女性ホルモンは、自律神経の司令塔でもある脳の「視床下部」からの指令によって分泌されます。視床下部はストレスや体脂肪の増減に敏感で、命の危機を感じるようなカラダの変化があるときはエネルギー消費をセーブするため女性ホルモンの分泌をストップさせることもあります。

守る機能が働く女性ホルモンの恩恵があるうちは大病からも守られるので、平均寿命からみても男性より女性のほうが長生きと言われています。

女性に多い膠原病や橋本病、リウマチなどの自己免疫疾患病、骨粗しょう症、動脈硬化、アルツハイマー病なども女性ホルモンが発症を抑えていることが、ここ数十年の研究で明らかになってきています。

こんなに万能な女性ホルモンはさぞかし女性のカラダにたっぷり溢れているのかと思いきや、実は一生を通してスプーンたった一杯分しかつくられません。

女性ホルモンの分泌の指令

出産数が減っている今、女性が一生の間に経験する月経回数は戦前の約50回と比べると現代は約450回と10倍近く増えているそうです。それだけ現代女性の生殖器は消耗が激しく、女性ホルモンの「ゆらぎ」の回数もゆらぎ度合いも大きくなっているということですね。

女性ホルモンの分泌が少なくなる更年期になると改めて不調を感じることが増えていきますが、ゆらぎ期の不調はずっと続くものではありません。

ゆらぎ期を抜けるまではセルフケアで自分のカラダに触れて変化を感じ取る習慣をつけながら、それでもやっぱりしんどいな…というときは女性ホルモン療法(HRT)や漢方療法などさまざまな治療という選択肢もあります。

日常のセルフケアで自分をいたわりながら、いざとなったら婦人科へ相談してみるなど、自分自身のカラダとよく対話しながら自分の感覚に従って状況を判断するとよいでしょう。

荒浪 暁彦_あらなみクリニック総院長 <この記事の監修>
富田 和美
ナチュラルセフルケアコーディネーター
自然療法家
セラピスト
リフレクソロジスト

【ヒーリングサロン和草公式HP】
https://r.goope.jp/nico-gusa
 

外資系化粧品メーカーでの美容部員、メイクアップアーティスト、セラピスト、ブランドトレーナー、コスメバイヤー等約30年に渡り化粧品業界で様々な仕事に携わる中、30歳すぎに経験した自身の肌荒れを皮切りに、不妊治療や更年期の劇的なカラダの変化など様々な実体験から「肌とカラダを活かすナチュラルセルフケア」を独自に導き出し、美容家としてオーガニック・ナチュラルコスメメーカーと消費者とを繋ぐ様々な活動を行う。2015年にオープンした自然療法サロン「ヒーリングサロン和草」での個人セッションをはじめ、全国各地でのワークショップ、大手百貨店でのイベントディレクター等の活動を通し毎日をここちよくする衣食住の提案を行う。近年は、デリケートゾーンケアをメインとしたセミナーや個人カウンセリングを通じて不妊や更年期の悩みを抱える女性へのサポート活動にも力を入れている。