呼吸エクササイズの紹介をする前に、なぜ「息」を見直すことがメンタルへ影響するのか説明してみたいと思います。
声楽家である僕が18歳で歌の勉強を始めた時、まずテノール歌手の父:古澤泉に弟子入りをし、歌のレッスンを受けました。そして最初に伝授されたのが「息」についての考え方です。
「歌に必要な息は3種類ある。一つめは生きる為、酸素を取り入れる為の息。次は声を出す為に必要な燃料としての息。だけど一番大切なのはもう一つ。それは【感情】の息だ。『息』という漢字は『自』分の『心』と書くだろう…」
これが最初のレッスンでした。歌を歌うどころか、息の吸い方だけで初レッスンは終わってしまいました。
感情や心がこもっていなければ、どんなに良い声で歌っても人の心には届きません。そういった感情表現は頭で考えるのではなく、息や呼吸の仕方で表現できるようになりなさい、ということを父は最初に教えてくれました。今でもこの言葉は『歌の極意』だと僕は考えています。
感情は息に表れます。泣く時、笑う時、怒る時…息の種類(呼吸の仕方)が変わります。
逆に、息を整えることで自分の心を整えることもできます。
怒りたくなった時は一呼吸おくと心が鎮まります。緊張した時は深呼吸、と習いましたね。心が鬱々としていて動かない時は、息も止まって、喉に詰まっているような感じがします。漢方では「気淡」と呼んだりします。
よく「空気を読む」なんて言葉が使われますが、場の雰囲気を知るには、その場にいる人たちの心や感情を読むことが大切なのだと思います。僕たちは知らず知らずのうちに他者の心を読み、その場の空気を読んでいます。
例えば、相手の表情が見えなくても怒っていたり、泣きそうになっているのがわかったりしますよね。それは僕たちが 相手の表情だけではなく、呼吸の仕方や声のトーンから感情を読み解きながらコミュニケーションを取っているからです。
まさに、息は自分の心。心は息に表れますし、逆に息をコントロールすることで心をコントロールすることもできるのです。