「クスイムン」の考え方は後に、口伝えや実体験をともない庶民の間にまで広く浸透することとなりました。
ちなみにこの本には、「ゴーヤー」についてはこう書かれています。
「邪熱を除き、労乏(つかれ)を解き、目を明らかにする。夏の月は毎日食つてよい。」
(訳: 体にこもった熱をしずめ、疲れを取り、目の疲れにも効く。夏は毎日食べて良い。)
ゴーヤーに期待できる効能は今でこそ明らかですが、この本に書かれているように素材の持つ効能を捉え、必要なタイミングで食する「食養生」の考え方が受け継がれていることが、伝統的な沖縄のくらしの知恵というわけです。
これは、今を生きる私たちも意識したい考え方なのではないでしょうか。
一皿で栄養バランス◎な沖縄家庭料理
沖縄料理が健康食と言われる理由は「食べ合わせ」にもあります。
一皿で栄養を補完できる家庭料理が多いことが特徴の一つで、時短でシンプルな食事スタイルです。
ゴーヤーチャンプルーを例に図解してみましょう。
主な材料はゴーヤー、豆腐、豚肉、卵、鰹節、そして塩。
炭水化物以外の栄養素(タンパク質, 脂質, ビタミン, ミネラル, 食物繊維)を補完でき、体に良い取り合わせにもなっていることがわかります。
体がよろこぶ「基本のチャンプルー」を作ろう!
最後に、基本のチャンプルーの作り方をご紹介します。
チャンプルーとは「島豆腐と季節野菜の炒め物」のことを言いますが、作り方のコツを押さえておけば、ゴーヤー以外の色んな素材でアレンジ可能です。
「一皿完結」「時短」「体がよろこぶ」沖縄食の知恵が、日々の暮らしを無理なくナチュラルに支えるものになればと願います。
材料(2〜3人分)
・ゴーヤー 300g(大1本, または中1.5本)
・豚バラ肉スライス 100g
・島豆腐(または木綿豆腐)300g
・溶き卵 2個分
・水 大さじ3
・削り節 5g
・塩 小さじ1/2
・しょうゆ 小さじ1/2
・サラダ油 1・1/2
作り方
1. 豆腐を大きめの一口大に手で割り、塩ふたつまみ(分量外)をなじませ、ペーパータオルで包んで水気をよく切る。
ゴーヤーは縦二つに切って、スプーンで種とワタを取り除き、3〜4mm幅の薄切りにし、塩ふたつまみ(分量外)を加えて揉み込む。
豚肉は2cm幅に切る。
2.フライパンにサラダ油大さじ1を入れて熱し、豆腐の両面を焼いて取り出す。
3.フライパンにサラダ油を大さじ1/2を入れて熱し豚肉を炒め、肉の色が変わったらゴーヤーを加えて炒め合わせる。
4.ゴーヤーの縁に透明感が出るまで炒めたら、水・削り節・塩を加えてひと混ぜし、蓋をして蒸し焼きにする。(30秒〜1分)
5.②の豆腐を戻し入れ、鍋肌からしょうゆを回しかけ軽く混ぜたら、溶き卵でとじて完成。予熱で卵に火を通す。
美味しく仕上がるコツ
「強めの火でささっと」がチャンプルーの基本!
火にかけたら一気に仕上げるのが、チャンプルーの基本です。
材料から余分な水分が出ず、味がぼやけません。
豚と鰹節の「合わさるうま味」がチャンプルーの美味しさ!
油で炒めたゴーヤーにうま味が加わることで、美味しい苦味に変化します。
炒めた豚肉から出る脂をゴーヤーにまとわせるイメージで炒めていきましょう。
鰹節が加わることでうま味効果も倍増。沖縄らしい味わいにもなります。
【プロ技】 いつもの木綿豆腐を島豆腐風にアレンジ
島豆腐を探すのは一苦労かもしれませんから、いつもの木綿豆腐にひと手間加えて「島豆腐風」にしてみませんか?
豆腐1丁に対して2〜3つまみの塩をなじませペーパータオルで包み、重石をして30分〜1時間おくだけです。
豆腐の豊かな風味が引き立ち、ゴーヤーに負けないくらいに存在感が引き上げられます。
※ ペーパータオルは途中で取り替えてください。
参照:高木凛,『大琉球料理帖』, 新潮社
「日本の食生活全集 沖縄」編集委員会, 『日本の食生活全集47 聞き書 沖縄の食事』,
農山漁村文化協会